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Channel: 私的な考古学
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倉敷考古館再訪

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ほぼ10年ぶりとなります。先週の金曜日には倉敷考古館に日帰りで出向き、備前市の鶴山丸山古墳出土の石製品実測をしてきました。旭川の瀬川さんからは「まるで水戸黄門漫遊記のようだ」と揶揄されていますが、今回は当初予定に沿った研究目的です。

対応していただいたのは間壁忠彦先生。大先輩にあたるわけですが、相変わらずお元気でなによりでした。そうはいっても、岡大生の頃に間壁先生と親しくお話をする、などという僭越なことは恐れ多くてできませんでした。当時から近藤義郎先生とのご関係も微妙だと先輩方からうかがっていましたし、こちらの面が割れると、いろいろと厳しい「教え」を賜ったという諸先輩のうわさを耳にしてもいたからです。

この土倉の内装を変えただけの由緒ある建物に収納され、木製の展示ケース越しに見る数々の考古資料には、学生の頃から秘かに何度か訪れては馴染んでいたつもりではありました。弥生後期の特殊器台やら金蔵山古墳の埴輪、それに膨大な副葬品やらと、かなりメジャーな考古資料を間近に見学できる場所でもあったからです。ちなみに秘かに、というのは、岡大生のしかも考古学専攻生などということが間壁ご夫妻に知られることのないように、という意味です。

しかし10年前に金蔵山古墳の石製品のひとつが環頭形石製品であることを突き止め、忠彦先生にその旨をお話ししながら実測をさせていただいたことがご縁となり、ようやくふつうの会話をさせていただけるようになりました。陳列ケース内では、件の石製品に、いつしか粘土で私の復元案どおりの造形が施され、全形が再現されていました。感謝です。

しかし幾度となく訪れたはずでもそ細かく記憶している資料というものは意外と少ないもので、やはり実測して初めて身体に覚え込ませることができるようです。

今回の資料調査を経て、ようやく金蔵山古墳と鶴山丸山古墳の主要な石製品を実測し終えました。同成社に連絡を入れてみたところ、まだ間に合うということでしたので、私の原稿「腕輪形石製品」の付表のなかに、今回の調査結果を入れてもらうことができそうです。

実測の他になにをしてきたのか、といえば、肉眼観察による産地推定です。大賀君との対話を重ねながら玉に準じた指標がほぼ明確になりましたので、今後は意識的にこうした作業を積み重ねようとの目論みです。

しかしこのような岡山への日帰り資料調査も、気持ちと時間に余裕がなければできません。こういうときにサバティカルの有難味を実感させられます。

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